戯れ人共の奇談書
鏡花水月
爽やかに迎えるトレンカの朝。
眠りから覚める者達にとっては、淀んだ気分で迎える朝。
「ちょっと、ロイド!」
否、ミシティアの怒鳴り声で迎えた朝。
「ん~? なんだぁ?」
寝ぼけながらも、だるそうに応答をするロイド。
「誰!? この人!」
ミシティアの指が向いた方向はロイド……、ではなく金色の髪を乱したシェラ。メガネは無惨にも放り出されている。
「ん~? ……あぁ、シェラ。おやすみ」
目を開ける訳でもなく、香りといつもの感触で判断を下したロイド。
伊達に毎朝、抱きつかれていない。
「じゃなくて! なんであんたに抱きついてるの!? そもそもどういう関係! 私の部屋でいやらしいことをしな――」
「お前はバカか! こいつはシェラ! ユェと身体を共有してる仲間! 抱きついて来てんのは、こいつの寝相が悪いから! てか、てめぇもいい加減起きてどけ! 暑い!」
ミシティアの発言を遮り、全力で否定をしていくロイド。その間にも起きる気配を見せないシェラに苛立ちを覚え、でこを小突く。
「ん~」
それでも起きないのが、シェラのすごいところだ。
「金髪で、シェラ……?」