戯れ人共の奇談書
起きたシェラの説明を聞き、呆れとも怒りとも違う、なんとも複雑そうな表情を浮かべ、ミシティアは結論を導き出した。
「はぁ、ようするにユェとシェラさんは、シェラの能力で同化してて、寝ると必ずシェラさんに入れ替わるのね」
頭が痛い……、というのが正直な感想だ。
「そういう事。ごめんなさいね、ロイドの寝相が悪いばかりに驚かせちゃって」
笑って言うシェラに、あんたが抱きついていただろう、というツッコミはかろうじて飲み込めた。
「ティアは荷物、そんなんでいいのか?」
そんなんとロイドが指を指したのは、動きやすそうな丈の短いズボンに、取り付けられた小さなポーチ。
ちなみに上は動きやすそうな袖のないシャツだけだ。
「だって荷物あると邪魔じゃない? 入ってるのだって、お金と傷薬(各種)ぐらいだし」
「でもティアちゃん、それだけだと横から見えちゃわない?」
シェラは特に何をとは言わなかったが、それだけで通じたようだ。
多少は胸が膨らんでいても、袖がないと言うことは、それだけ隙間が出来る訳で……。
「見えるかな……?」
気になるのか、胸を隠すように自分の肩を抱くミシティア。
「ん?」
理解出来ずに置いてけぼりのロイド。それすらも気づいていない。
「仕方ない、ちょっと重いかもしれないけど」
そう言って白衣を脱ぎ、Yシャツにベストというシンプルな姿になるシェラ。
履いているのがスラックスだからか、白衣を脱いでも学者に見える。
そして脱いだ白衣から銃を取り、白衣をミシティアに手渡した。
銃は安全装置が利いているのを確認し、ズボンと腰に挟みベストで隠した。
「え、あ、ありがとう。シェラさん」
「シェラでいいわ」
ミシティアが袖に手を通すと、折るまでではないが大きいようだ。