戯れ人共の奇談書
トレンカの東に位置する広大な森〈モルビル〉
そこには薬の材料となる草花が茂る森。
しかし森全体が鬱蒼としており、あまり人は寄り付かない。
「ちょっとぉ、ひとりにしないでよぉ~……」
トレンカに居た頃とは比較にならないほど優雅さの抜けたシェラ。
今にも泣きそうな声は、虚しくも森に飲み込まれる。
辺りに響くのは猛禽類の声だけだ。
『迷ったか?』
声をかけるユェ。しかし、その声は外に出ることはない。
「二人とも先に行っちゃった」
どうやら暗く不気味なこの森で、置いてけぼりを食らったようだ。
『どうしようもねぇ、バカコンビだな。入れ替わるか?』
「うん」
そのどうしようもないバカコンビはと言うと……。