戯れ人共の奇談書
「静かだな……」
痛みの引いた身体で、ゆっくりとだが進むロイド。
歩いていて、森の入り口辺りでは聞こえていた猛禽類の鳴き声が、いつの間にかなくなっていることに気がついたようだ。
「師匠の言ってた猛獣が近くにいるのか? だとしたらアホのユェ君が危ないな……」
真剣に心配しているロイド。歩みを早める。
「ん?」
後ろから微かに漏れた殺気と、草を踏み鳴らす音。それも複数。
恐る恐る振り返るロイド。
そこには獰猛な哺乳類〈グール〉が三匹。
森や荒野を縄張りにする習性から首がなくなり、見開かれた大きな一つ目。
その下にある口は、あらゆる大型の動物を食す為に、横に広く裂け、太く長い牙が並ぶ。
全身が茶色い毛に覆われ、耳と思われる物は出ていない。
そして、獲物を捕らえる要とも言える四肢を地につき、前足よりも筋肉質に発達した後ろ足で飛びかかる、獰猛な哺乳類〈グール〉。
「もしかして、アホなロイド君が危ない……?」
アホなロイド君、正解。