戯れ人共の奇談書

「どうしてあなたは、そんなにすぐ迷子になるのよ……」

「違うって。迷ったんじゃなくて呼ばれたんだ、風に」


焦った様子で言い訳をする少年と、それを冷ややかに見つめる金髪の少女。


「まぁ、いいわ。今更だし。それより、あのおじさんと犯人に道化師ってバレてないでしょうね?」


眉をひそめ少年と顔がつきそうになるまで近づける少女。
相変わらず、メガネの奥の薄氷色をした瞳が鋭く輝いている。


「大丈夫。シェラが気にするような事はやってない(と思うぞ)」


それに対し、負けじと少年も紅眼で見つめる。
まぁ、言わずもがな圧倒的に負けているが。


「なんでぇ。小僧は道化師なんかぁ」


聞かれていたらしい。前を歩いていたおっさんが立ち止まり、再び豪快に笑い出した。


「んな事、この町じゃあ気にしなくていいぞ。住人の半分が道化師だからな」


シェラと呼ばれた少女と少年は顔を見合わせ、おっさんは再び歩き出した。

< 4 / 62 >

この作品をシェア

pagetop