戯れ人共の奇談書
「どうしてあなたは、そんなにすぐ迷子になるのよ……」
「違うって。迷ったんじゃなくて呼ばれたんだ、風に」
焦った様子で言い訳をする少年と、それを冷ややかに見つめる金髪の少女。
「まぁ、いいわ。今更だし。それより、あのおじさんと犯人に道化師ってバレてないでしょうね?」
眉をひそめ少年と顔がつきそうになるまで近づける少女。
相変わらず、メガネの奥の薄氷色をした瞳が鋭く輝いている。
「大丈夫。シェラが気にするような事はやってない(と思うぞ)」
それに対し、負けじと少年も紅眼で見つめる。
まぁ、言わずもがな圧倒的に負けているが。
「なんでぇ。小僧は道化師なんかぁ」
聞かれていたらしい。前を歩いていたおっさんが立ち止まり、再び豪快に笑い出した。
「んな事、この町じゃあ気にしなくていいぞ。住人の半分が道化師だからな」
シェラと呼ばれた少女と少年は顔を見合わせ、おっさんは再び歩き出した。