戯れ人共の奇談書

染まる空は紺色に姿を変え、欠けた月は白く輝くなか、ユェは合流した。金の入った小さな麻袋を片手に帰ってきた。

「ほぅ、この女がね……。お前、フジ家の者だろ」


特に顔色を変える事なく話しを聞いていたユェ。懐に隠してたナイフ五本を雑にロイドへ渡していく。

「……いかにも。某はフジワラノミズキ。盗賊シー・ユェラン、お主に少々お聞きしたい事がある」


正座のまま立ち上がろうとせずに口を開くミズキ。心なしか口調が悪へ向けた憎悪の牙ではなくなっている。


「お主はなにゆえ盗むのだ? なにゆえ王女を誘拐した」

「あ? 俺はニーナ(国)の出身だ。つまりは元奴隷」

「え、これってなに? 昔語りで長くなるの?」


真剣な語りから入るユェに驚き茶々を入れるロイド。


「じゃあ、宿を探してそこで話してもらおうか」


ミシティアの提案により宿へ向かう事になった一行。涼しくなってきた夜の空気に触れ歩く。

< 44 / 62 >

この作品をシェア

pagetop