戯れ人共の奇談書
幼い復讐の奇談書
――ニーナから脱する時にはもう、俺は奏演者としての能力が備わっていた。未熟だったけどな。
ニーナから抜け、俺は一人で放浪していた。奴隷解放に加え、ニーナ国王をも殺した首謀者の一人だからな、当然カラスからの指名手配。それでも俺は逃げなかった。
あの当時は能力のおかげで、自惚れすら覚えていたからな。
時には高野を歩く旅人を襲い、時には山に居着く山賊を襲い、時には町に住まう住人すらも襲った。
生きるため、己の餓えを埋めるため。
そんな生活を続け成長した時だ。とある国の近くの森に子供がいた。
木漏れ日を金色に反射する短く整えられた髪に、頬に小さな擦り傷をつくった白い肌の女の子。
服装を見、すぐに感づいた。庶民にしては無駄な装飾のついた服装。
「あれ、見ない顔だね。お引っ越ししてきたの?」
フェンダリア国王女。
「ふん、お前みたいな人間は嫌いだ」
名をシュエラ・F・ローベルア(当時9才)
シー・ユェラン(当時13才)と出会い、フェンダリア王国から姿を眩まし、現在までの約10年間の昔語り。