戯れ人共の奇談書
相変わらず石畳の道が続く、港の近く。
海に面した道を歩く事数分。
その店はあった。
「お~ぅ、てめぇら。バリバリ働いてるかぁ? お客様ぁ、どうぞ上手い飯をご堪能しやがれぇ!」
魚介料理専門店〈カスタペローネ〉
レストランなどと言う名が似つかわしくない店。
そこは海男どもの経営する、少しばかりむさ苦しい料理店。
もちろん、客も熱気溢れる漢どもばかりで、女性客など、今し方入ってきたシェラだけだ。
「なんだか……、スゴい所ね」
思わずズレたメガネを戻すシェラ。顔には困惑の色を残し、身に纏った白衣ごと縮こめた。
「うっは、いい所じゃんか。エレガントさがなくて俺好み!」
それに反し、少年の目は無邪気そうな輝きを放ち、よだれをこぼさんばかり……。
「ロイド、とりあえずよだれ拭いて。みっともないから」
「だっはっはっは。まぁ奥の席に座って、好きなだけ注文しててくれ。俺ぁ、こいつをカラス(世界的保安勢力)の奴らに預けてくる」
未だに気絶している男を、笑いながら掲げ持ち店を出て行ってしまった。
取り残されたシェラとロイド。
怒号や罵声の飛び交う海男どもの店。
「とりあえず……」
「飯食うか!」
むさ苦しい野郎共の魚介料理。とくとご堪能しやがれ、馬鹿野郎。