戯れ人共の奇談書
「おい、あれ。姫じゃねぇか?」
城下から少し離れた道で賊のリーダーがシェラを見つけた。門などもないただの壁に向かい歩いている。
「へへ、さっさと見つかってくれたぜ。見てろお前ぇら。これが道化師になった俺の力だ!」
そう言ったリーダーは大きく片手を振りかぶり――
「グラビティ!」
勢いよく振り下ろした。すると先程まで軽い足取りで歩いていたシェラが、まるで足枷でも付けられたかのように鈍くなり、全力で身体を前に進めようとしているのだが、間もなく倒れこんでしまった。
「魔女か」
後ろからこっそり見ていたユェは独り言り、一つの案が思い浮かんだ。
リーダーを先頭に男たちはシェラへと歩み寄る。計画通りに物事が進み、優越感に浸りながら。しかし、彼等は知らなかった。少年の欲に塗れたる計画を。
「さぁて、久しぶりに職につくとするか」
今ここに盗賊シー・ユェランの大規模な計画が始まろうとしていた……。