戯れ人共の奇談書

白衣を翻し、引き戸に手を掛けたところで、シヴェルは振り返り、微笑んだ。

「護りたいものがあったのなら生きなさい。その能力は奪うためだけに、身につけたわけではないのでしょう?」

「こんな能力、もう用なしだ」

兄貴達は逃げられただろうからな……。


「奏演者、護るべくして身につける能力者。私も……、そうありたかった」

「は?」

「それでは、安静にしていてください」

そう言い、シヴェルは引き戸を閉め、立ち去ってしまった。一瞬見せた寂そうな横顔。奴もまた、護ることが出来なかった、奇人なのだろうか……。
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