戯れ人共の奇談書

賊の一件から三度、日が登った。その間に傷は癒え、動けるまでに至った。

療養している最中はシェイラ姫に会うことはなく、シヴェルが食事の度に顔を見せに来ていた。警戒されているのだろう、おそらく、シェイラ姫と一緒に居た中年の男に。それも仕方ないか。


「こちらです」

フェンダリアへ仕える兵士に連れられ歩く、白い石造りの廊下。

甲冑をガチャガチャと鳴らし、俺の前を歩く若そうな兵士は、兜を脇に抱え、俺を謁見の間へと導く。

武器を手にせずに。すなわち、それが王の意向なのだろう。


「こちらが謁見の間です。どうぞ」

どうやらついたようだ。重苦しい鉄の扉を、ここまで案内してくれた兵士が開けてくれ、中へと促された。


初めに目がついたのは、玉座の隣で佇む、先日の中年男。


そして、玉座へ腰を落ち着かせているのが、フェンダリア王か。

シワが少なく、見ようによっては若く思えるが、衣を身にまとい、ただ居るだけで王としての威厳が滲み出ている。(当時32)


「はっは。今回の件を解決へ導いたのは、見知らぬ少年とノブナガだと聞いてはいたが……。誠であったか」

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