戯れ人共の奇談書
シヴェルの部屋を見渡すと、やけに生活感がなく、ビーカーやフラスコなどばかりが、散らかっている。
「お前もお前だ。訳がわからない」
目の前に注がれた水に、目をやる。
思わず、ため息が出てしまう。
「なぜ私が医者をしているか、ですか?」
「違う! お前もバカだろ! ビーカーをコップ代わりにするな! そもそも、なんでビーカーとフラスコぐらいしかねぇんだよ!」
「楽だからです」
「あ~、くそっ! ふざけてやがる!」
なぜ次から次へと、こうもイラだたされるのか。ニーナの頃とはまた違う、憤りを感じる。
「まぁまぁ、そんなにカリカリしないで。あるがままを受け止めるのです。違いが楽しくなりますよ」
「黙れ。もう俺は戻る。明日からは、遊撃・自治隊に所属だそうだ」
「頑張ってくださいね。こちらの事はおって連絡します。あなたの事を、皆に紹介もしたいですし」
そんな呟きを背で聞き、振り向かずに手をあげ、シヴェルの部屋を後にした。
恐らく、今のセリフに笑みがない。見なくてもわかるほど、声色が真剣なものとなっていた。
なにが奴を、そうまでさせるのか……。