戯れ人共の奇談書
「……ふぅ。ごちそうさま。見た目は豪快だけど、とても美味しかったわ」
「そりゃあ当然さ、姉ちゃん。なんたって海の男の料理だからな!」
丁寧に口を布で拭き、礼儀正しく褒めるシェラ。そして、強面巨漢の店員は自慢気に鼻をすする。
「なんだなんだ、相変わらず随分小食だなぁ」
こちらは礼儀とは裏腹に、がっついて料理をほうばるロイド。
この男にとって食事とは味ではなく、腹を満たすことだからだ。
「いいの。私よりロイドやユェが食べなきゃ。――オーバーチェンジ」
シェラが俯き加減に呟くと、一瞬だけシェラの身体が歪んだ。
「……飯? あぁ、礼で貰ったのか」
そして、歪みが消えた頃には、白衣を纏っているが金髪の少女ではなく黒髪の青年が姿を現した。
「よう、ユェ。どんだけ食ってもいいらしいから、今のうちに腹膨らましとけ」
少々驚いた様子を見せる店員や他の客を余所に、食事を始めるユェと呼ばれた青年。
小さく笑い、仕方ないと言いたげに眉と口元を歪めた。