戯れ人共の奇談書
「おぉ~う、戻ったぜ野郎共ぉ! おん? 誰でぇ、あんちゃん」
帰ってくるなり、いきなりロイドと向かい合って食事をする見慣れない青年に絡むおっさん。
忙しい奴だ。
「俺はユェ。説明は面倒だから、ちょっと見ててくれ」
ユェもオーバーチェンジを唱え、再びシェラへと入れ代わる。
「これは私の能力。簡単に言うとさっきの男の子と入れ代われるの。――オーバーチェンジ」
そしてまたまたユェへ入れ代わる。
「な?」
「でぇ、はっはっはっは。あんちゃん達、面白ぇ能力持ってんだな。あんちゃんもジャンジャン食いねぇ」
「ありがとう、おやっさん」
「なぁに、恩人の仲間だってんなら、食わさずにはいられねぇ。それに俺ぁ好きだぜ、立ち向かう野郎ってのは」
ユェが礼を言うのと同時に、おっさんは日に焼けた筋肉質な腕を回し、厨房へ入って行った。
「でも、やっぱり長居は出来ねぇよなぁ」
突然口を開くロイド。口いっぱいの肉を蓄えながら。
「食うか、喋るかどっちかにしろバカ」
「じゃあ、食う」
目つきを引き締め、凄く格好のいい表情でなんとも間抜けな発言をする。
「……悪いな、俺のせいで」
「そんな事ない!」
「だから絞れっての! 飛ばすなバカ!」
「いでっ! 何すんだ、てめぇ! 握り潰すぞ!」
「ほぅ、この俺に逆らうか。出来るもんならやってみな」
先ほどの温厚な目つきからは想像もつかない程鋭く、青黒い瞳も冷酷さだけが輝き、黒刀のような瞳になったユェ。
食事の手を止め、両腕を顔の前へ出し、腕を縦横無尽に力なく振る。
「うっそ、たんまたんま! それはマジで止めて! いろいろ都合が悪くなるから!」
「っち」
舌打ちと共に下ろされる腕を確認し、ロイドは安堵の色を見せた。