昆虫戦記
「可哀想?お言葉ですが、私には、この子を立派な兵に育てなければなりません。将来を見通した時に、美加子殿が、今を同情し甘く育ち、昆虫に襲われ、殺されるのと、こうして、今を耐え稽古をつけ、その日が来るまで自分の身は自分で守れる様に育てられる。どちらが可哀想ですか?美加子殿が今、言っている事は、みすみす昆虫の餌食になって下さいと言っているのと同義語。それとも大人になった時、ずっと、この子の側を片時も離れず見守れるとでも言うのですか?三つ子の魂、百まで。昆虫は例え子でも襲ってきます。邪魔をしないで下さい。」

美加子は
再度
反論しようかと
口を開こうとすると
狼の子供は
血まみれな体で
歯を剥き出しに
兵の狼に飛びかかる。
しかし
ヒョイとよけ
後ろ足で
小さな体を
蹴り飛ばす。

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