昆虫戦記
「私も猿の長の言葉に同感です。私は今まで死に行く仲間を見てきました。本当に助けたい・・・傷つき息も絶え絶えの仲間に薬草を口に運ぶ。しかし薬草を持つ手が震えて上手く行かない・・・何とか飲ませても助からない・・・そんな中、涙を流しながら兵が残す言葉を聞くのは私共、衛生兵なのです。不思議なものです。敵の憎しむ言葉を言いながら死んでいった者はいません。みんな家族の事や大切な者に対する思いを告げた言葉しか聞いた事が無いのです。環境が、どうのこうのって事では無いのです。戦はしたくなんか無いです。しかし例えまこと殿の言う説が正しくても私共は、死んでいった者の意志を継ぐ覚悟があるのです。」

その言葉を聞く
熊の長は
静かに聞きながら
頷く。

今まで沈黙を
守っていた
狼の長が
沈黙を破る。

「すみませんが今回は、まこと殿と美加子殿の意志には同感は出来ません。皆、覚悟があり、ここにいる。自然を壊している事に対しては遺憾だが、この戦が終わったら、森の修復を考えております。」

まことは
必死に
訴えようとする。

「しかし!!その前に手遅れになったら、どうするんだよ!!」

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