君と過ごした日々





 何 か が 壊 れ る 音 が し た











視界の隅で智士が立ち上がって里桜と教室を出ていくのが見えた。



一緒に教室を出ていったのはうちだった筈なのに。



いつも冷たくあしらわれるのは里桜だった筈なのに。



いつから、変わってしまったのか。



それとも、最初からこうだったのか。



それすらも、今のうちには判断がつかない。




ただ、鐘がなる直前。

誰かに腕を引っ張られて教室を出た気がする。



出る直前に、驚いた顔をした春香と夢斗に会ったのは覚えているから。


そして、今現在誰かに腕を引っ張られているという感覚と、見慣れた廊下の景色。


教室内にいないということは一目瞭然だ。





思考回路があまり残っていない頭で考えるのは、腕を引っ張っている人物は誰かということ。

力が強いから、男子なのは間違いない。

シャツを来た視界を埋め尽くしそうな広い背中からは、全く判別がつかない。


ただ一つ、わかる。

























彼は、智士じゃない。





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