初恋
「咲坂君…部屋戻らないの?」


「あ、愁!」


「えっ?」


「愁って言うの、俺。だから愁でいいよ。」




私は一度も男の子の名前を呼び捨てで呼んだ事なんか無くて、恥ずかしくなった。



「え、えーと…しゅ、愁…」


「優美、可愛いね!顔真っ赤!」




さりげなく私の名前呼び捨てにした愁。
部屋の前に貼ってる名前プレートを見て知ったんだよね。きっと。


それより…私はきっと今本当に顔が赤いと思う。
恥ずかしくて倒れそう。



「今ねー、同じ階の人達に挨拶しに行ってたんだ。ほら、せっかく共に入院生活をするだから仲良くしたいなーって!」


「そ、そうなんだ。なんか凄いね…」


「なにがー?つか挨拶終わって暇だからさ、一緒に少しお喋りしよっか!」



人懐っこい愁の笑顔と腕を引っ張ってくる強引さに負け、私はおどおどと愁に引っ張られながら、室内の休憩所に居座った。
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