SECRET SYSTEM
プロローグ
とある山奥の小道に、一軒の家が建っていた。


赤い屋根、白い壁の、こぢんまりした家ではあるが、壁に入ったヒビや汚れからして相当の年代物である事は間違いない。しかし、小さな庭にある花壇は手入れが行き届いており、この家の住人がいかにマメであるかを示している様でもあった。



その家の、マメな住人の名は、「サラ」 といった。
背中まである長い髪、ぴんとはねたクセっ毛。
まだ幼さの残る大きな瞳の「少女」。顔立ちは整っていて、
年頃で言えば一見一七歳程だろうか。
しかし外見とは裏腹に、物腰はかなり落ち着いたもの。
例えるなら老婦人のよう(…と言っても、決して言い過ぎではない)。

「サラ」には、もう一つひとの目を惹くところがあった。
それは、彼女の腕にぐるぐると巻かれた布である。
彼女はめったにそれを外すことは無い。

外すのは、一日二回。
何のためかというと、それは自分のメンテナンスのため。

一日二回自分で、自分がきちんと稼働しているかチェックする。
布の下に覗く色白の肌には、小さな長方形型のパネルがあり、
その表面を指で軽くタッチすると、蓋がぱかっと空いて、
さらに中の操作パネルが見えるのだ。
各両腕にひとつずつ。それぞれが各側の半身の制御を管理。

面倒臭いなどと言っていられない。なにしろかなり古いシステムなので、自分で管理しないと突然エラーを起こしてそれっきりになってしまうことだってある。



そう、「サラ」はある博士の手によりこの世に生み出された、機械なのである。
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