SECRET SYSTEM
森は深かった。
初めは細身の木々を中心に並んでいたが、そのうち樹齢何百年単位かという位の大木がいくつも見られるようになった。

「 -----僕は植物学は詳しくないんだが・・・この太さなら樹齢何百年くらいになるんだろうね」
マセソン、思わず見入ってしまう。

「すこしお待ち下さい。・・・この木は、樹齢300年位ですね。
ええっと、そっちは600年かしら」
木にそれぞれ手を触れながらサラが答えた。

「サラ、君、植物に詳しいのかい?」
「いいえ」
「じゃあ何で・・・」

「私、手のひらに識別センサーが入ってるんです。
普通は、人間と同じくらいの識別能力・・・熱いとか冷たいとか、痛いとか、
そんな感じしかないんですけど。それをちょっと、パワー上げて」

「触れたものの内部分析も出来るのか、君は・・・」

「はい。お役に立ちましたか」

「ああ・・有り難う」



マセソンは驚いていた。一体誰が、こんな能力を造ったのだろう。
・・・しかし何より驚いたのは、サラが自ら、必要に応じて能力を向上させていることだった。普通はマスターの指示が無い限りそんなことはしない。

《勝手に能力を応用する》なんて芸当は。


祖父の記録を読む限り、《人型生活補助システム》には、1日の仕事をメモリーさせておくことが出来る。そうすれば《システム》は、いちいちマスターの指示を仰がずとも自分でその通りにやってのけるのだ。
祖父のものでは最大1週間分の仕事をメモリーさせることが出来るらしいが・・・

「サラ、変なことを聞くけど。君はあの家で一体どれぐらい暮らしてるんだい」

サラは腕組みをして、そうですねと少し考えた。しばらく逡巡した後・・・

「申し訳ありません。正確な時間はなぜかわからないんですが、
恐らく・・・10年近くは」

「じっ、10年っっ!?」

少なくとも10年以上の仕事のメモリーが、サラには与えられているということか。必要に応じた能力の書き換え、それに自分では《古いシステム》だと言っているが、それでも相当の高精度の内部プログラム。見た目も、殆ど普通にいる少女と変わらない。


―― 一体誰が、こんなものを、造りあげたんだ?
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