SECRET SYSTEM
マセソンは、その言葉の途中でこっそりイヤホンを外してみたが、すると聞こえるものはバカでかい猫の鳴き声に変わってしまうのだった。



種々様々な山の果物と、胡桃を一杯に詰めた布袋を引きずりながら、マセソンは考えを巡らせていた。サラは、居合わせた牛から絞ったばかりのミルクを入れた瓶を3本ずつ、両手にぶら下げて隣を歩いている。

「・・・そうか、これが君の、“お買い物"のやり方なんだね」

「ええ。町まで行くより便利でしょう。それに私、町にある色んな機械にすぐ反応してしまうから・・・。内蔵されている維持装置に影響が出たりしたら、怖いから」
そう言うと、ぺろっと舌を出して見せるサラ。

「サラ、聞いても構わないかな。・・・君は一体どういう訳で、あの動物たちの言葉が解るようになってるんだい」

引き続き歩みを進めながら問うマセソン。

「はい。そうですね・・・聴覚システムの働きを強めて、動物さんの鳴き声と心音から感情なんかを判断して・・・ 後は、メモリーされている各動物の鳴き声パターンと組み合わせて。あ、 要するに動物語辞典みたいなものなんですけど」

「その動作をするのには、何秒くらいかかるんだい」

「稼働中ですと、音声を認識してから、約0.5秒です。
会話も同じプログラムを応用します」


マセソンは心の中で(今両手は使えないので)頭を抱えた。
続けてはーっと溜め息。

なんてこった。
これじゃ普通の人間同士の会話と変わらない。動物相手なのに。

「君はすごいな」

全く心からのマセソンの言葉だった。しかしサラは至って普通に、

「ありがとうございます」

笑ってそう返すのだった。
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