SECRET SYSTEM
騒動の朝<前>
マセソンがやってきて丁度1週間目の朝。


いつも、遅くとも10時には起こしに来る筈のサラが、その日は来なかった。
起きぬけの格好のまま、珍しく8時頃に目を覚まし、朝食も食べずにパソコンに向かっていたマセソン。
10時を過ぎてようやくその事に気づいた。

家の中が、妙に静かになっていた。この時間なら庭で水まきをしている筈なのに、水の音も何も聞こえなかった。不自然なほどの、静けさが家中に満ちている。

「サラ?」

妙な胸騒ぎがする。
マセソンは一通り家中を歩き回ると、最後にサラの部屋の前に立った。


数回ノックして、名前を呼んで、 ------返事がない。


「サラ、開けるよ」
扉には鍵が掛かっていなかった。


「・・・・・・・ま、せ、そん、さん」

部屋に踏み込んだマセソンが見たものは、ベッドの上で半身を起こそうともがく、力無いサラの姿だった。

「おい、どうした!?」

あわててサラを助け起こして、もう一度ベッドに寝かせる。

「・・・申し訳ありません、今日、朝、起きようとしたんですけど、なぜかメインコンピューターからの信号がうまく伝わらないみたいで・・・足も動かないし、体もうまく動かせなくって」

また起き上がろうとするサラを、マセソンは押し止めた。「寝てるんだ」
「でも」

「いいから君は寝てるんだ。
無理をすると、他のシステムにまで影響が出るかもしれない。
ええっと、君は・・・自己回復プログラムは持ってるのかい」
「はい、オプションで・・・システム異常発生から、30分以内に起動する筈なんですけど・・・」
「君が起きたのは?」
「今日は・・・八時位かしら・・・」
「まずいな、二時間近く経ってる----何か、変化は」
「ありません・・・」
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