SECRET SYSTEM

サラは、一日二回のメンテナンスの時間になるとよく、マセソンに尋ねた。

『マセソンさん。人間って、どんな感じがするものなんですか?』
『どんな感じって?』
『うーん。そうですね。こう、なんか・・・“緊張する"とか、“どきどきする"とか。そういうのって、どんな感じなのかなと思って』
『サラは緊張したりしないのかい?』
『うーん、どうなんでしょう。
でもここで暮らしてる分にはあんまり無い感じですね』
『はは、たぶんそうだろうね』
『私は、プログラムされている動作しか出来ないから・・・。人間だったら、プログラムされて無いのに色んなこと、色んな感じ、味わえるのに。ちょっと、うらやましいんです。
私が人間だったらなあー』
『でも人間だから苦しいこともたくさんあるよ。それでも?』
『いいじゃないですかー。折角生まれたんだもの。何でも経験しないと損ですよ、絶対。苦しいことや辛いこ とでも、逃げたら折角のチャンスが無駄になってしまうと思います』
『・・・・苦しいことはチャンスなのかい?』
『もちろん。楽しいことを楽しく迎えられるように、自分自身を成長させる、チャンスです』
そう話しながらチェックを終え、サラは元通り腕に布を巻いた。

『・・・なんて。これ、実は私のマスターが教えてくれたことなんです。受け売り、しちゃった』

にっこり微笑む。

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