SECRET SYSTEM
出会いは突然に
「嫌だ、雨」
呟くと、サラは慌てて物干し場に走った。
昨日の天気予報では、今日は一日中晴れだって言っていたのに。おかしい。

「折角冬物のお洋服たくさん洗濯したのに、これじゃあ台無しだわ」

ぱたぱたと走って、物干し場にたどり着く。
が、頭のうえにはやさしく、春の太陽が光をふりまいていた。

「あれ、おかしいなぁ・・・・。
確かに聴覚センサーが雨のザーザー言う音、キャッチしたのに」

ちなみにまだ、ザーザーは続いている。-------どこから?
視線を泳がせる・・・・ザーザー・・・・水の流れる音・・・・。


「・・・・・ううう」
「きゃ」


サラは少し吃驚して飛びすさった。
ザーザーいっていたのはお庭の水まき用の蛇口が全開になっていたから。
そして、その蛇口を全開にしている人物は、どこから入り込んだのだろうか…しこたま水を被ってぶっ倒れていた。
サラが物も言わずにポカンとしていると、
その人物はちらっとサラの方を見上げ、

「す・・・水道代、払いますから・・・うう」

それだけ言って、失神してしまった。

水まき用蛇口を全開にしていた人物の名は、マセソン・ルシーダといった。
年の頃はサラと同じか、少し下くらい。顔は、まだ少年の面影を残している。
身なりは決して美しいとは言えなかった・・・というのは彼が貧しい身なりだというのでは無く、単に格好がだらし無かっただけである。
実際、汚れや破れやシワに目をつぶるとすれば、服そのものは割りといい布を使っている。それもそのはず、シャツやベストも、ネクタイピンやメガネのブランドも、滅多に世間に出ないサラでも解るくらい、有名なブランドの品物ばかりだった。
それが何故だらし無く見えるのかというと、何日も着っぱなしな事に加えてアイロンも糊も全く使ってなさそうだったからである。
サラが自分の服をじっと見ていることに気づいたマセソンは、苦笑してわが身を省みた。おどけて諭すように、サラに言う。
「こういうのを、宝の持ち腐れっていうんだ。わかった?」
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