SECRET SYSTEM
次の日。

今度はサラの代わりにマセソンが寝込んでしまった。
無理もない、丸3日ほとんど一睡もしなかったのだから。
ぴんと張り詰めていた緊張の糸が切れた反動で、彼は今まさに糸の切れた操り人形よろしく、だらんと寝床に沈んでいた。

かけていたメガネは、外して枕元に置いてある。視界はぼやけているけれど、無理に焦点を合わせようとさえしなければかえって心地よかった。眠りと目覚めの丁度境界線でふらふらして日中を過ごしていた。

日が暮れるころになると、しっかり歩けるくらいには持ち直した。
「サラ、いるかい?」
サラの様子を確かめようと、部屋を出たマセソン。
それでも多少ふらふらとしながら、リビングまで歩き出て来たマセソンは、テーブルについてリンゴをむいているサラの姿を見つけた。

足音に気づいて、顔を上げるサラ。

「あ、駄目じゃないですか起きたら。寝てて下さい。いま、リンゴ持っていこうと思っていたんです・・・食べられますか?」
「大丈夫、・・・・ありがとう。いただくよ」
「はい」

席についたマセソン。サラはむき終わったリンゴをマセソンに勧めた。
リンゴをひとつ口に入れながら、マセソンはサラにもリンゴを勧め、ふう、と一息つく。

「調子はどうだい」
「ええ。正常に稼働しています」
「そうか」
「・・・・・マセソンさん」

ためらいがちにサラが言葉を発した。どこかいいにくそうに、うつむいたまま。

「あの、・・・・えっと。ありがとうございました。私、あんなになったこと今までなくって、うろたえちゃって、 ごめんなさい・・・・・・」
ぱっと顔を上げて、
「あの、どうしてか解らないんです。でも、私本当に嬉しくて。嬉しいのに、こうやってお礼の言葉言うのなんか、色々考えちゃって、言おうとしたら胸が詰まるみたいな感じがして、やっぱりまだ、私何処か悪いのかな」

苦笑しながら言うサラ。マセソンはそんな彼女に微笑みながら、

「いや・・・こちらこそ、どういたしまして」

とだけ、返した。


さらに次の日を迎えるころには、マセソンは、すっかりとはいかないまでもほぼ全快していた。サラの手伝いをしたり、散歩したりしながら、祖父のレポートと自分の研究記録やサラのデータを照らし合わせたりすることも忘れなかった。
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