SECRET SYSTEM

「やっぱり故障箇所は見当たらないな。会話システムも正常だし。この間君の中の基盤も少しのぞいたけど、 キズひとつ無かったし。
・・・そんなに違和感があるかい」

前と同じように、サラの両腕の調整装置とマセソンのパソコンを接続。キーボードを叩き、ディスプレイと睨み合いながら、マセソンは肩を竦めた。

「違和感・・・というか・・・。なんて言うんでしょう、“言葉に詰まる"と言えば一番解り易いかもしれません。そんなしょっ中じゃなくて、なんか、恥ずかしかったりする時とか」

落ち着かないのか、手を握ったり開いたりしながらサラが答える。

「・・・それ、故障じゃないよ」
「え」
「それはね、サラ。君の中にある感情システムのせいだ」
「感情システム・・・そんなのあるんですか?」
「解らなくて当然だ。人間でもそんなに意識するものじゃ無いからね。そして君の場合、恐らくそれはここに ・・・・位置している」
マセソンは、トントンと自分の左胸を叩いて見せた。

恐らく。そう、祖父の図面と造りが同じなら。

「そしてその感情システムは、視覚や聴覚のようにいつも起動しっぱなしのシステムじゃない。サラ、 君は“楽しく"なるとどうする?」
「笑ったり、しますね」
「それだ。それが基本的な感情システムの働きだ。サラが今どんな“気持ち"なのかを、行動を半強制して表情や態度なんかに表してくれる。悲しくなれば涙が流れるし、怒ったりしたら無口になったり。
喜怒哀楽を司るシステムなんだよ」
「そうだったんですか、じゃあ、言葉に詰まるのも」
「故障じゃないならそのせいだろう。・・・もっとも、始めは喜怒哀楽の基本動作しかプログラムされていないが、これは君なら“応用"させたり“増築"できたりが可能だろうから、君次第でこれからもっと色々な感じを味わえるようになる」
「本当ですか?・・・あー、良かった!・・・そっか、私、人間じゃないけど人間みたく色々感じられるんですね」
「苦しいときもあるかもしれないが・・・どうする?
会話システムに影響があるといけないから取り外そうか?」

笑いながら言うマセソンに、サラは慌てて言葉を足す。
「と、とんでもありませんッ!取り外しちゃ駄目ですよ!
いいんです、これはこのままで」
言いながら、嬉しそうににっこり笑った。
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