SECRET SYSTEM
そう言ってカミルは、試作品として造っていたこのコ《サラ》の本体に、私の意識と記憶。それにデータを“インプット"したの。
・・・彼の試みは成功した。私は《人型生活補助システム》の身体を得て、生きながらえる事が出来たの」

マセソンには、自分の目の前で話されていることが、
どこまで本当なのか解らなかった。
しかし事実、目の前で話しているのは紛れも無く祖母《セレア》の意識を持ったものである。
ただそれだけを信じて話を聞くしか無かった。


「それが11年前の事。その次の年に、カミルも亡くなって・・・私ひとり残されてどうしようもなくて、取り敢えず家を出ることにしたわ。

誰もいないところで、壊れるまでひっそり暮らそうと思った。それでここに 家を買って、暮らし始めたのだけど、どうもひとりは肌に合わなくて、なんとかしないとって考えたの。自分で壊れるってのも考えたけど、せっかくあの人が遺してくれたシステムだもの。そんなこと出来なかった。

それで私は、《サラ》を生み出すことにした。

生きて行くのに必要な機能は、私が追加でプログラムしたりしてね。
でもそれだけじゃつまらないだろうから、自分で自分を成長させられるプログラムや、感情システムなんかも組み込んだの」

「ち、ちょっと・・・あのシステムを、おばあさまが・・・?」

「あら、気づかなかった?“省エネ機能"に随分悩まされたでしょう?

まあそれから、私は“セレア"を消し去る準備をした。こうしてあなたに話せるだけの、最小限の自分のデータをフロッピーに落としたりね。
全て払ってから、《サラ》を起動した。

・・・あとは《サラ》の方に尋くべきよ」

「 ・・・・・って、まさかあのトラブルもプログラムのうちなんじゃ・・・・。」

「まあね」

マセソンは思った。
(ひょっとしたら、祖父よりすごいのかもしれない・・・この人・・・。)
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