SECRET SYSTEM
しばしの沈黙の後、決意を込めて、セレアは言った。

「いい、たった今から《人型生活補助システム・製造番号S-200》のマスターは、
あなたよ、マセソン」


「いきなり何を言って・・・大体、僕は・・・まだ」

驚きながらも俯くマセソン。
そう、まだ。自分はまだ、祖父に近づいちゃいない。
技術もまだまだ、知識もまだまだで、追いかけているばかり。

「マセソン、良く聞いて。
あなたや周りから見れば、カミルはすごい研究者に見えるでしょう。
でも、実のところそうでもなかったのよ。
実際、私と出会ったころはそこら辺にいる名も無い研究者たちと
なにひとつ変わらなかった。
そんなあの人が、どうしてこんなものをつくれたのか」

想像なんかつきやしない。

「なんで」 半ば放心状態で、マセソンは続きを促した。

「あの人、人付き合い下手くそなのに、物凄い寂しがりやなのよ。
いつも誰かと話したそうにしていた。
動物も好きで、飼いたがっていたけど、研究が忙しくて世話が出来ないからって。 それで、色んな動物の図面を作ったの。
実現は難しいかもしれないけど、でも実現したらみんな便利だろうなって。
あの人、優しい人だったから・・・。

こんな風にして、本当は《サラ》を起動させるつもりはなかったんでしょうけど。 それでも、こんな素晴らしい研究結果を生み出せたのは、彼が有能だったからじゃないと私は思うわ。
ただ彼が優しくて、少し創造力が強かっただけ・・・

私、思うの。
何かを造り出すのには、技術だけあっても駄目なのよ。
ほんの少しでも優しさと、そうして夢がなくっちゃ。

技に優れている者だけが優れた研究者とは限らない。
人を思いやる努力をして、
その結果生み出したもの程素晴らしいものはない・・・
なんてね」


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