SECRET SYSTEM
いささか拍子抜けしつつ、マセソンは次の言葉を紡ぐ。

「・・・・僕は、マセソン・ルシーダ。研究所の所長をやってる。
・・・ウチの研究所は、人工臓器を主とした研究を 行ってるんだが・・・・」
「まあ、お若いのに所長さんだなんて凄いわ」

胸の前でぽんと手を組み、素直に感心して見せたサラ。
マセソンは溜め息ひとつつき、

「所員は僕のほかに三毛猫のジャンとオカメインコのポールだけだ。」
「毎日賑やかで楽しそうじゃないですか」
「そう、毎日大変・・・ってそうじゃなくて!・・・・どこから話すべきか・・・。

僕の祖父は、あらゆる博士号を持つほどのとても頭のいい人だった。
だがその分偏屈でね。
自分の研究した情報や取ったデータなんか、
めったにヒトに見せやしなかったんだ。

実のところ、孫の僕ですら祖父が何を研究していたのかよく解らない。

ところが、先日僕が資料整理をしていたらとんでもないものが見つかった。
そう、祖父の研究記録だ。

まだ祖父が駆け出しの頃の物だったけれど、僕には十分だった・・・・」


そこまで一気に喋ってから、マセソンはふう、と一息入れた。
目の前のテーブルにある、サラの入れた紅茶を飲み干す。
底が甘い。砂糖を入れたのに掻き混ぜずそのまま冷めてしまったからだ。
渋い顔をするマセソン。

「ここまでのあなたとの会話記録を、記憶システムに登録して宜しいですか?
ミスター・マセソン」

にこにこ顔で尋ねるサラ。
ちなみに彼女のカップも、紅茶がそそがれた状態のままだった。
その様子をちらとみて、やっとマセソンはふっと息をついた。

「・・・構わないよ。
どうやら君のほうも僕の話に興味を持ってくれているようだから」

すると、サラはさらに御機嫌な瞳でマセソンに続きを促した。
「ええ、なんだか懐かしい感じがするんですもの。
ミスター・マセソン、まだたっぷりメモリーできますから、
もっとお話して下さらないでしょうか」

マセソンは肩を竦め、ため息をついた。

「…君は本当に機械なのかい?」
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