晒し神
会社などでも、それは現れていた

「木村君、ちょっとお願い出来るかな?」

「えっ?またかよ」という顔を一瞬した木村だが、すぐに「はい、なんでしょう」と部長の元に寄って行った

「いやね、ほら先週、先方とのゴルフ接待あったろう、あれで先方の専務とメアド交換したんだけどね、ほらわたし機械音痴だからさ」

そう笑いながら、簡単に箇条書きした文章と、アドレスを手書きしたメモを木村に手渡した

「こう、楽しかった旨というか、またお願いしますというか、また行きましょう、みたいな感じで頼むよ」

身振り手振りをまじえながら
「キミは文章の感性というかセンスがいいしね」と褒めながら

「あ、私のパソコンと携帯ね~調子悪くて、またキミのパソコンから頼むよ」
と、部長は木村の肩を軽く叩くと、部屋を出て行った

木村は軽く会釈をしながら、部長の姿がドアに消えると、ドカッとイスに座り

「あいつ、馬鹿じゃねえの?」とつぶやいた

やり取りを見ていた隣の同僚の清水が

「ご苦労様だね~」と声をかけてニヤついた

そして急に
「ちょっと小耳にはさんだんだけどさ」
木村の耳元に顔を近づけてきた

怪訝そうな顔をしながらも、清水に耳を向けた

「晒し神、知ってるだろ?騒ぎが起きて以来、なんでもあっちこっちの会社で、部長以上とかは直接、パソコンとか携帯を捜査して、文章を送るな、みたいなのがあるんだってよ」

「上のお偉いさん達、晒されるといろいろまずいんだろうね」清水はくすくす笑った

黙って聞いていた木村は、下を向いていたかと思うといきなり立ち上がり

「じゃぁ~、なにか?俺は生贄か!?」
と声を荒げた

驚いた清水は「シー!シー!」と人差し指を口に当て、焦りながら木村を座らせようとした





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