晒し神

「いい?撮るよ~!」「つぎ私ね~」
キャイキャイとはしゃいで写メを撮る女子高生。

他県ナンバーの複数の車、並んでピースサインで写真を撮るおばさん連中。

その場所は一種独特な雰囲気に包まれていた。

そこはひとつき前に「晒し神」に家族を晒され、逃げるように居なくなった、小さな町工場跡であった。

観光スポットの様なその建物は、全体に何かのアートのように、色とりどりのスプレーで落書きされていた。

この様なことが、いまや日本全国で見る事ができた。


「唯さん、この前のお話ですが」
唯のデスクに歩み寄りながら

「どう考えても危険だと思います」と市毛が切り出した。

「ヤツの名前を騙って、ネットに書き込み、おびき出すのはいいですが、しかし」

市毛の言葉をさえぎる様に

「推測が当たっているかどうか、それで少しは解るでしょ」と唯が返した。

「でも、やはり反対です、推測が当たっていたとしても、もし何かあれば」

「大丈夫だよ、もし、当たっているなら晒されないし」
気軽な感じで言う唯に

「いや、やはり反対です!唯さんはいいとして、悟君に何かあったら」と市毛は食い下がった。
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