晒し神
都内を少し離れた、別荘地の前に須藤の車が止まっている。

ログハウス風の家に、早足で入った須藤は少し舞い上がっていた。

部屋に入ると、もどかしそうに盗んだCDをパソコンにセットし
「これでオレは王様だ」と小声でつぶやいた。

パスワード入力画面に進み、持ち出した報告書に書かれたパスワードを「G」「O」と声にあげながら打ち込み、エンターを押した。

キーボードから目を離し、画面のパスを見直して

「え?」という顔をした

「GOMENNASAI、ごめんなさい?」と声に出した。

ブーンというCDのドライブ音と共に画面が変わり、数秒後「削除完了」の文字がモニターに点滅していた。


「ふう」と逮捕された須藤の面会から市毛が帰ってきた。

「アイツ、ソフトを使って、世界中のVIPや国自体を脅して、金儲けを考えたらしいですよ」

「有力者に、盗んだ個人情報をばら撒くと脅せば、捕まらないと踏んでの犯行だそうです」

「しかし、あの時、唯さんの、捕まえないで泳がして!はビックリしましたよ」


その言葉に、北原から電話が来た夜を唯は思い返していた。

息絶え絶えの北原の声が蘇る

「ごめんなさい」

「え?なに?先輩」

「ごめん・・い」「パス・・ごめ・・さい」

「とめる・・・パ」

「先輩?先輩!」


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