彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編
ここは良介が所長をしている 『柿沼探偵事務所』
ごく普通のアパートの一室に看板を掲げているだけの、所長の良介と事務員兼助手、総勢二人の小さな事務所である。
その上、その唯一の助手は『拠ん所ない事情』で、もっか休業中だった。
八畳・洋間の窓際に、事務机が二つ。
その前にあるあまり高級とは言えない、応接セット。
そのソファに向かい合って、良介と、依頼人の自称『ゆうり』と言う高校生くらいの少女が座っている。
少女は、中肉中背。
今風のはやりの感じの全くない、肩口で切りそろえられたストレートの黒髪。
オレンジ色のデニム地のシャツにブルーのジーパン。
ごく普通の女の子だった。
そう言う意味では好感の持てる少女だったが、大きな問題があった。
彼女が言うことには、『自分は死んでいる』と言うのだ。つまり幽霊だと――。