彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編


ここは良介が所長をしている 『柿沼探偵事務所』


ごく普通のアパートの一室に看板を掲げているだけの、所長の良介と事務員兼助手、総勢二人の小さな事務所である。


その上、その唯一の助手は『拠ん所ない事情』で、もっか休業中だった。


八畳・洋間の窓際に、事務机が二つ。


その前にあるあまり高級とは言えない、応接セット。


そのソファに向かい合って、良介と、依頼人の自称『ゆうり』と言う高校生くらいの少女が座っている。


少女は、中肉中背。


今風のはやりの感じの全くない、肩口で切りそろえられたストレートの黒髪。


オレンジ色のデニム地のシャツにブルーのジーパン。


ごく普通の女の子だった。


そう言う意味では好感の持てる少女だったが、大きな問題があった。


彼女が言うことには、『自分は死んでいる』と言うのだ。つまり幽霊だと――。

< 2 / 25 >

この作品をシェア

pagetop