水島くん、好きな人はいますか。
言われなくたってわかってるよ。
それを顔に出せば、瞬は「いいか万代」と声に怒気を帯びた。
「もう絶対、あいつとは関わるな」
「聞き飽きたよー……」
「2年以上も京からお前を遠ざけた俺の努力を無駄にする気か!?」
それはわたしの台詞だと思う。
2年以上前、瞬のクラスに水島くんが転校してきた日。瞬は『あいつとは関わるな』と言ってきた。
そのまま指切りしちゃったんだよなあ……。
軽い気持ちだった。
関わる気も、接点もないと思ったから約束を結んだのも事実だけど、あろうことか瞬は水島くんと仲良くなった。
瞬と幼なじみであるわたしは事あるごとに水島くんと顔を合わせてしまうから、話さないように今までなんとかお辞儀だけで済ませてきたのに。
努力が無駄になったと言うなら、わたしのほうでしょう?
「約束を破ったわけじゃない」
今日のは不可抗力だし、人として助ける他ないじゃない。
「やっぱ本当なんだな!? 京としゃべったんだな!?」
「本当に偶然、ばったり会っちゃったんだもん」
「偶然会って、なんで話すことになるんだよ! 話しかけたのはどっちか言え!」
「……、水島くん?」
先に手を振ってきたのは水島くんだったからそう答えた。
すると瞬は「あの天然女たらし……」なんて皮肉めいたことを言って脱力している。