水島くん、好きな人はいますか。
・彩り、象る
恋愛経験が皆無ってわけじゃない。
それでも風邪がぶり返したんじゃないかってくらいの悪寒を感じていた。
「万代の真似で息抜きしに来た」
と、昼休みにE組へ訪れたみくるちゃんがお弁当を持参してきた、そのわけは。
「つまり、彼女ちゃん含む仲良し4人組の中にライバルがいて、2対2に分かれてるってことかー」
「りっちゃん……どうしてそんな平然としていられるの」
「彼女ちゃんの他に幼なじみくんを好きな子がいないなんて、言い切れないじゃん」
そうだけど、他人ならまだしも仲間内でって……。
仲良し4人組が“みくるちゃん応援派”と“瞬を狙う子を応援する派”に分かれてるってことでしょう?
「幼なじみくんを好きな子かー……あの子かな。いつも幼なじみくんの隣をキープしようとしてる子」
腕を組んだりっちゃんが天井を見上げると、みくるちゃんが驚いたように目を見張る。
「やっぱわかるんだ……だよね、わかるよね」
「え? え? ど、どの子?」
ふたりを交互に見ると、りっちゃんが眉間にしわを作る。
「万代に思い出せるかなー。ほら、髪巻いてる子いるでしょ。ゆる巻きで、メイク濃いめの」
はっきり思い出せないけど、確かにいる。気が強そうなわりに、発する声は甘めな……。
強いて思い出せたのは、勉強会のときの『瞬ってば拗ねてる? かわいー』と、A組にノートを持っていったときの『瞬ってばまたいじめたんでしょー』くらい。