水島くん、好きな人はいますか。
あの子が瞬のことを好きなの? ほんとに?
ふと彼女の言葉で印象的だったものを思い出し、口にしていいものかと悩む。
「あの……もしかして、トイレで『構い過ぎっていうか、瞬ってばみくるの存在忘れすぎ』って言ってた子?」
「うわーっ嫌なこと思い出させてごめん! その子!」
ああやっぱりこうなった!
みくるちゃんは両手で顔を覆い、必死に「気にしてないよっ」と繰り返す。
事情を知っているりっちゃんは気に留める様子もなく、紙パックのジュースを吸い上げると、苦笑をもらした。
「その子、彼女ちゃんに喧嘩ふっかけてきてるよね?」
なんか恐ろしいワード出てきた。
「う~……。万代ごめんね。こんなの言い訳にしかならないから、瞬にも黙ってたんだけど……」
「大丈夫さー。万代は彼女ちゃん大好きな推奨派だから」
ニカッと笑うりっちゃんがいてよかったと心底思う。
「うん。それにわたし、みくるちゃんと仲直りしたもん」
「まあご覧の通り、万代に相談しても大半はおろおろされるのがオチっていう」
りっちゃんに頬を膨らませると、みくるちゃんが背筋を伸ばした。
「~っ本っ当に申し訳ないんだけど、あのときね!? 万代にむかつくことあるでしょって聞かれたときね!? 売られた喧嘩を買っちゃったの!」
突然の威勢の良さにりっちゃんと顔を見合わせる。
けれどりっちゃんは「ほ~らね~」とわかっていたような口ぶり。