水島くん、好きな人はいますか。
「りっちゃんって昔っからこうで、観賞してる人を名前で呼ばないんだよね……」
「その腹いせなのか、幼なじみくんはあたしのこと“面食い”って呼んでるからね」
「あははっ! 嘘でしょ~!? ほんとに? なんであたしと瞬のこと名前で呼ばないのかと思ってたよっ」
みくるちゃんはけらけらと笑い、教室を出るころにはすっかり元気になっていた。
りっちゃんは早速みくるちゃんのSNSをチェックして、「萌え放題!」と喜びわたしを笑わせた。
◇
「マヨマヨ発見」
正門に向かう帰り道、出し抜けにかけられた声に顔を上げる。
すれ違いそうになったのは、親指と人差し指で作ったファインダー越しにわたしを見るハカセだった。
「……発見されました」
「携帯ばっか見てると転ぶよ」
「あ、はい……。ハカセって本当に白衣が似合いますね」
「そう? 私服にしようかな」
さらっと冗談……だよね?
「どうして放課に白衣を着てるんですか?」
「先輩に呼ばれて科学部の手伝いに行くところだから」
「ああ。多いですよね、今から先輩と一緒に部活する人」
「高等部のほうが設備いいし、たまには好きなことしたいしね。マヨマヨは? 水泳部に入ってたんだっけ」
おもむろに首を傾げるハカセに、ぎくりとする。