水島くん、好きな人はいますか。

「りっちゃんって昔っからこうで、観賞してる人を名前で呼ばないんだよね……」

「その腹いせなのか、幼なじみくんはあたしのこと“面食い”って呼んでるからね」

「あははっ! 嘘でしょ~!? ほんとに? なんであたしと瞬のこと名前で呼ばないのかと思ってたよっ」


みくるちゃんはけらけらと笑い、教室を出るころにはすっかり元気になっていた。


りっちゃんは早速みくるちゃんのSNSをチェックして、「萌え放題!」と喜びわたしを笑わせた。







「マヨマヨ発見」


正門に向かう帰り道、出し抜けにかけられた声に顔を上げる。


すれ違いそうになったのは、親指と人差し指で作ったファインダー越しにわたしを見るハカセだった。


「……発見されました」

「携帯ばっか見てると転ぶよ」

「あ、はい……。ハカセって本当に白衣が似合いますね」

「そう? 私服にしようかな」


さらっと冗談……だよね?


「どうして放課に白衣を着てるんですか?」

「先輩に呼ばれて科学部の手伝いに行くところだから」

「ああ。多いですよね、今から先輩と一緒に部活する人」

「高等部のほうが設備いいし、たまには好きなことしたいしね。マヨマヨは? 水泳部に入ってたんだっけ」


おもむろに首を傾げるハカセに、ぎくりとする。
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