水島くん、好きな人はいますか。
「えっと、わたしは水泳続けるかわからないというか、それどころじゃないというか」
「なるほどね。選抜のことで頭がいっぱいなんだ?」
すうっと表情を消すわたしは、相変わらず『選抜』という言葉に拒絶反応を起こす。
「そ、そういえばみくるちゃんに聞きましたよ。ハカセが、瞬に言ったほうがいいって助言してくれたんだって」
「ああ、女子トイレ事件? 仲直りできてよかったね」
「はい。みくるちゃん、まずハカセに相談してたんですね。だからハカセも、わたしのことかくまってくれたのかなって思ってたんです」
「実は僕、隠れキャラだからね」
頭に疑問符を浮かべたわたしはすぐに、いつもの冗談か、と判断して笑った。
「保健室にかくまってくれてありがとうございました」
「いえいえ、ご丁寧にありがとうございます」
頭を下げると、ハカセまで深深とお辞儀をするからまた笑ってしまった。するとハカセも微笑んで、ポケットから携帯を取り出す。
「週末の勉強会は参加するの?」
「あ、はい」
「そ。じゃあついでに言っとく」
ついでに? 不思議に思うと、ハカセは携帯画面に視線を落としながら「みくるからメール」と教えてくれた。
「みくるちゃんと8年連続同じクラスなんですよね」
「うん。僕とみくるは似たような成績だから、クラス編成の基準は成績順っていう噂、真実かもね」