水島くん、好きな人はいますか。
真実としか思えないなあ……。
瞬はみくるちゃんより20位前後低いだけで、わたしとりっちゃんも大差ない順位だもん。
「いいなあ。成績上位クラスで、みくるちゃんなんて仮想模試でもA判定もらえて」
思わずこぼれた羨望に、ハカセは声もなく笑う。
「大丈夫。今回はスーパー家庭教師がついてるから」
「え……水島くんのことですか」
「やる気出るでしょ」
「……またニアミスの多さが露呈するのかと、げんなりしました」
「さすがマヨマヨ。周知の事実なのに、露呈って言うところがいいね」
確かにみんな知ってることだけど、ひどい。
「頑張ろうね。じゃ、気をつけて」
白衣の裾をひるがえしたハカセに手を振って、止めていた足を帰路に戻す。
やっぱりハカセってしゃべりやすいな。
2回目の勉強会に参加したとき、突然「マヨマヨ」と呼ばれたことには面食らったけど、瞬たちが“また始まった”という感じだったせいで、とくに異議を唱えることもなかった。
勉強会中にハカセとしゃべっていても瞬はうるさく言わないし、わたし自身、ハカセはいい人だと思う。
問題があるとすればそれはひとつ。
「水島くんも来るのかあ」
どうか穏便に平和に勉強ができますように。
願ったところで叶うなら100回は願う。
勉強を見てもらえるのは有難いけど、ちょっと憂鬱……。