水島くん、好きな人はいますか。




定期的に行われる勉強会はおしゃべりもできるファミレスや喫茶店が定番。


それを覆してくれたみくるちゃんって、本っ当に、なんて優しくてかしこいんだろう。


「みくる。俺を騙したこと、覚えてろよ」

「いつものファミレスで待ち合わせって言っただけじゃん。そこで勉強するとは言ってない」


休日に制服で集合って時点で気付かなかったのかな。


ぶつくさ言う瞬を連れて向かう先は、中等部の図書室にある学習スペースだ。


「もう俺らの教室でよくねえ!? あんな静かな場所、お前らも1時間で限界だろっ」

「僕はどこでもいいよ。京は図書室の常連だよね」

「んー。読み直したいのあるけん、残っちょるかな」

「貸し出し中だったら帰りやがれ。お前なんか選抜で名前だけ書いときゃ合格だろーが」

「は!? そぎゃんことしたら落ちるに決まっちょーが!」

「ほら着いたよ! 静かにしてっ」


図書室へ足を踏み入れる。かすかに暖房がきいていて、数名の生徒が机を利用していた。


わたしたちは6人席の机に移動し、各々好きな場所へコの字型で座った。


まずい……。水島くん、右斜め前だ。


早々と本棚へ向かった水島くんとはまだ話していないというのに、瞬からは殺気しか感じられない。


そろり、と正面に座ったハカセが取り出した教材に視線を逸らす。


「目指せ苦手分野克服っ」


そう声をかけてくれたみくるちゃんが隣にいれば、いろいろと頑張れそう。


――よし、集中。


意気込んだわたしの集中力は、図書室を利用するのが5人だけになったころまで続いた。

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