水島くん、好きな人はいますか。
「わたしと水島くんに接点を持たせちゃったのって、瞬だよね」
「はあ? なに俺のせいにしてんだ。お前が息抜きなんてすっからだろうが」
「だって……水島くんがわたしの塾の日とかサボり方まで知ってるなんて、どう考えたって瞬が、」
「あんっの野郎! そのネタ使ってお前に話しかけやがったのか!!」
「それは、瞬自身が話しかけるネタを提供したってことにならないの……?」
「お前の株を下げとこうと思ったんだよ」
「瞬ってたまに本当に最低だよね」
もう帰ってほしい。
そんな意味を込めて後ろに体を倒す。
隣に座っていた瞬は振り返ってわたしを見下ろしてきた。
心配しているような顔つきはたぶん気のせいで、やっぱり過保護すぎると思った。
だから瞬に呼ばれたって布団に顔をうずめて些細な抵抗をしてみる。
「万代。『わかった』は? 俺の言いつけは守れ。約束しただろ。もう絶対、京と関わるな」
今日のわたしは徹底的に嫌なことから目を逸らしたいのに、当たり前のように瞬には通じない。
「ずっとお前の味方なのは、俺くらいだ」
「……」
「おいマヨネーズ。『わかりました』が聞こえねえぞ」
「……わかりま、せん」
「てめえ万代! このわからず屋がっ!」
「痛い痛いっ! すぐプロレス技かけるのやめてよー!」