水島くん、好きな人はいますか。
マックも大学の学食もアウェイだ! ファミレスがホームだ!
と決めたわたしたちは、昼食を食べ終わったころに騒がしい高校生の団体が来店したことで、頭を抱えることになる。
水島くんは、わたしたちが雑音込みの入試問題と戦っているあいだ、ひとり飄々と分厚い医学書を読んでいた。
「――終了。ペン置いてー。お疲れさま」
ピピピッとアラームが鳴る。水島くんは腕時計のボタンを押すと、ぐったりする4人分の解答用紙を集めた。
「採点するけん。好きにしちょって」
「俺、便所」
「僕も。あと糖分が欲しい」
「あたしも……」
瞬、ハカセ、みくるちゃんが席を立つ中、わたしはテーブルに頬をつけて窓の外を見ていた。
もう暗くなってきてるよ……。本当に入試問題やってたんだなあ。
「水島くんも、お疲れさま」
のそりと体を起こす。正面に座る水島くんが採点しながら口元だけで笑う。
「ん。万代もお疲れ」
「……水島くんも自分の勉強あるのに、ごめんね」
「俺、名前書いただけで合格するんじゃろ?」
にやり。水島くんはどこか無邪気に、男の子の顔で笑う。
そんなことしたら落ちるに決まってる、って自分で言ってたくせに……。
わたしが口をへの字に曲げれば、相好を崩して満足そうにしていた。
本当、笑顔が似合うな。
相手が誰であろうと水島くんはいつも――…。あれ? どうして今、“いつもじゃない”って思ったんだっけ。
疑問に思いながら、増えていくマルとペケを眺める。
「そういえば水島くんって選抜受けるんだね」