水島くん、好きな人はいますか。

「京、誰と電話してんの?」

「うるさい兄貴」


電話中だと言うのに水島くんは冷ややかに答えた。


「だけん、わかちょーって何回言わす気かやっ」


兄弟がいるとは……。水島くんをしかめっ面にさせるお兄さん、見てみたいかも。


「――うっ!?」


ストローから吸い上げたココアの味が希有だ。


「あの、瞬? これ、なんか、ココア以外の得体の知れない味がするんですけど……?」

「隠し味って言葉も知らねえのか」


瞬なんか水溜りの1歩手前でつまづいて転べばいい。


怨念を送っていると、視界の端で水島くんがグラスに口をつけたのが見えた。


「水島くんそれっ……!」


絶対ただのコーヒーじゃない!という警告は間に合わず、飲み込んでしまった水島くんは激しく咽る。


「~なんっ……かやこれ! 瞬なに入れちょー!?」

「コーラとウーロン茶のブレンドコーヒー、おいしかったデスカ?」


さっ……最低……。


「ちょお……っまず過ぎ……こぎゃん飲みもん、飲みもんじゃなか……」

「ざまあ――イッテ! なにすんだよ万代!」

「どいてよもうっ! 瞬の単細胞!」


「……ほう?」とか言い出す瞬を押し退け、自分と水島くんの飲み物を取り替えに行く。


本当に信じられない。感謝するどころか嫌がらせなんて。しかも呆れ果てるくらいのしょうもなさ……!


わたしのことで水島くんに迷惑をかけたくないって気持ちはまだあるのに、身近に危害を加えようとする幼なじみがいたら元も子もないじゃない!
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