水島くん、好きな人はいますか。
「ピアスもお兄さんの真似とか?」
「~っんな……ことは、あるけど……」
「あるんだ?」
「開けようと思ったんは俺だけんっ。ただ服とか小物とか詳しいんが、兄貴ってだけで」
不服そうに、もごもごとしゃべる水島くん。
お兄さんの真似をしてピアスを開けたという事実が、よほど屈辱的なのだと見て取れる。
なんか……新発見?
水島くんとこういう会話、しないもんなあ。
「向こうの友達もピアス開けてたり、髪染めてたりするの?」
「あー……ひとり、ふたり? 髪は染めちょるらしい」
「……。向こうの友達と連絡取ったりしないの?」
「必要があれば取っちょーよ」
水島くんはわずかに振り返り、その綺麗な顔に微笑をたたえた。
それがわたしにはなんとなく違和感が残って。
どこか、さびしそうに映って。
『向こうの友達と連絡取ったりしないの?』と訊く前、にわかに感じたためらいの正体に、帰路についてから気付いた。
必要がなければ連絡は取らないってこと?
あんなに他愛ないメールをマメによこす水島くんが?
「ねえ瞬。水島くんって、どうして転校してきたの?」
みんなと分かれた帰り道、隣を歩く瞬に訊いてみる。
「なにを考えてんのかと思えば……優男なんかにたらし込められてんじゃねえぞ! 騙されんな!」
「わかった。水島くんに訊いてみるからいいや」
「ふざけんな許すか。その携帯をしまえ」
そう言うと思った。
携帯を鞄に戻すと、瞬はため息交じりに話し始める。