水島くん、好きな人はいますか。
「見つけたっ!」
反射的に振り返ったわたしの瞳に映る、夜と同じ色。
どれだけ濡れているように見えても、覗き込めば懸命さが宿る双眸に、涙腺がゆるんだ。
「~っのバカ万代! どこほっつき歩いちょー!」
「みず、水島く……っ」
「瞬たちも心配しちょーが! 電話くらい出れたじゃろ!?」
「き、気付かなくて……あと、言ってる意味がよく……」
「は!? わからんかや!?」
「すいませ……」
う……水島くんにため息をつかれたのって、初めてだ。
でもどうしてここに水島くんがいるのか、本当にわからないんだもん。見つけたって言われた意味も、水島くんの息が切れている理由も。
「……友達?じゃ、ないよな」
「あ……ぶつかっちゃって」
「謝ったよな? お騒がせしてすいませんでした。連れて帰ります」
よく通る水島くんの凛とした声が、すぐそこで響く。
彼女たちからの返事を待たぬまま、「行こ」と肩に手を添えてきた水島くんを、すごいと思った。
状況を判断する冷静さ。その上で相手にも言葉をかける頭の回転の速さ。わたしを連れ出す自然な動作。
きっと水島くんなら、彼女たちの言動すら軽くいなすことができる。なにを言ってもなめられてしまうわたしには、到底真似できない。
羨ましい。
これが最善だと、正しいと思えなくちゃきっとできない。
水島くんには、撓むことも折れることもない太い芯のようなものが通っているみたい。
……いいな。どうしてそんな風にいられるんだろう。
わたしはいつも失敗して、後悔して、たゆたってばかりだ。