水島くん、好きな人はいますか。
「――ん。見つけた。今からそっち行くけん」
電話する水島くんの少しうしろを歩きながら、気を抜くと涙が出そうな目をこする。
「なん? ああ、ちょお待って……万代」
顔を上げると、水島くんが携帯を差し出していた。
ためらってから携帯を受け取り、「はい」と言えば。
『てめえ!! 俺の連絡を無視するとは何様だっ!』
今日はもうひと言も怒鳴られたくないと思っていたわたしの願いが、0.5秒で砕かれた。
『おい。まずはごめんなさいだろ。家出て何十分経ってると思ってんだ。180分超えてんだよ』
「……え、」
『夜中にふらふらしやがって。ふざけてんのか』
「しゅ、瞬……あの、」
『謝る気がねえなら早く帰ってこい! いいなっ!?』
「……切られた」
「心配して怒っちょーよ。大丈夫だけん」
水島くんは携帯をポケットにしまい、微笑む。
「近くにおってよかったが。ずいぶんゆっくり歩いちょったけんね」
「……3時間も経ってるとは思わなくて」
自宅から最寄りのコンビニまで10分もかからない。昼間ならまだしも、わたしが家を出ると気付く瞬だもん。3時間も戻らず、電話にも出なかったら怪しむに決まってる。
「瞬、水島くんにも連絡したの?」
「俺、出かけちょったから。19時過ぎに万代もいたじゃろ? あのとき瞬に電話かけたの俺だけん。で、今どこにいんのって瞬から連絡来たんが……21時くらい?」