水島くん、好きな人はいますか。
・不変と可変
「万代ー。これありがと! 助かったよ~」
5時限目の授業が終わると、りっちゃんがプリント片手に駆け寄ってくる。
「どういたしまして。これ期末の範囲だもんね」
定期テストは授業内容の他に補正プリントや小テストも範囲に含まれるため、失くしたら自滅行為に近い。
「あー期末嫌だー。ってことでやめよう、この話」
りっちゃんは前の席に座り、「楽しい話をしようじゃないか」と身を乗り出してくる。
「最近どうなの~。幼なじみくんと愉快な仲間たちとは」
小声で尋ねられ、首をひねる。
「誰かとフラグ立ってないの? 恋、とか」
むふふ、と楽しげなりっちゃんは両手でハートを作る。
「りっちゃん。わたし、主に選抜のことで頭がいっぱいでして……」
「うわあ。あんな、美!って感じの集団の中にいて恋愛脳が刺激されないとか、万代、女子として終わってる」
「終わ……っ。え、でも、胸はときめくよ?」
「ときめかないほうがおかしいってば。あたしなんてあの集団を見ただけで胸がきゅんきゅんしますよっ!」
それアイドル雑誌を読んでいたときも言ってなかった?
りっちゃんはとにかく面食いだからなあ。わたしは未だに容姿端麗な人を前にすると気後れしちゃって、だめだな。
内面を知ってる人には、そうでもないけど……。
ときめく要因はいつも、外見ばかりじゃない気がする。