水島くん、好きな人はいますか。




残りわずかになった夏休み最後の登校日。


なんとか宿題の提出期限を守れる安心から気を抜いていれば。


「万代!」


モテるとひと目でわかる女の子が手招きをしていた。


わたしは意味もないのに癖っ毛の髪に手櫛を入れながら、E組の出入り口で待つ未来(みくる)ちゃんの元へ向かう。



「瞬、どこに行ったか知ってる?」

「え……ううん」

「万代も知らないかー。今日も一緒に登校したよね?」

「う、うん。下駄箱で別れたけど、ちゃんと教室には向かったと思う」

「それが鞄はあるんだけどさあ。宿題提出しなきゃなのに……京とまたどっかでサボる気かなー」


どきり。廊下の先を調べるように首を伸ばしたみくるちゃんの言葉に動悸がする。


「あいつらほんとしょーもないね。瞬にいたっては万代に怒る権利ないと思うよ」


水島くんどころか自分の彼女にまでわたしの息抜き事情をしゃべるなんて、瞬ってどうなれば満足するんだろう。



「そういえば万代、京と友達になったんだって?」

「えっ!?」

「瞬がこの前ね、電話でぶつくさ言ってた」

「と、友達っていうか少し話しただけで……なんか、ごめん……」

「あははっ! なんで謝るかな!」


声高に笑うみくるちゃんは明るくておしゃれで、すごくかわいい。


何回しゃべっても、中等部内で目立つグループの一員であることに頷ける。

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