水島くん、好きな人はいますか。
・ぶつかる鼓動
≪社会の課題プリントNO.96~98持って来い。大至急。≫
クラスメイトに見せてもらえばいいのでは……?
授業中に届いたメールを見返していると、チャイムが鳴り響く。
……嫌だとか怖いとか言ってられない。
先生が教室を出ると同時にA組へ走った。
「さすが万代!」
――え。廊下に出てまで待っていたらしい瞬が、ガッツポーズをしてみせた。不気味に思いながらも駆け寄れば、会話する間もなくA組に押し込められる。
「来たぞプリント!」
え、え、なに……っ!?
持っていたファイルを奪われたと思ったら、歓声を上げた数十名の生徒が瞬の周りに集まってくる。
「万代ぉぉおおお!! ありがとう今度お礼するね!!」
みくるちゃんまで!? なな、なにこれ。目が殺気立ってますけど、どうしたのA組の人たち……!
A組の人たちはざっくりと二か所に集まり、全員がプリントにペンを走らせ始めていた。
見たことのない異様な光景と、周りをがっちり囲まれているせいもあって、身動きが取れない。怖すぎる。
「マヨマヨ発見」
奇妙なくらい空席が目立つ教室の真ん中で、ハカセが悠悠閑閑と机に腰掛けていた。
「こっちおいでよ。そこ息苦しいでしょ」
手招きをするハカセに心の底から感謝する。
目をぎらつかせるA組の人たちの囲いからそろりと抜け出し、ハカセに歩み寄った。
「万代、肉食動物に囲まれた小動物みたいじゃったな」
背後から聞こえた笑い声にどきりとする。