水島くん、好きな人はいますか。


「終わった終わった! 万代ぉおおお!」


抱きついてきたみくるちゃんは、「助かったよー!」と何度もお礼を言ってくる。やがて瞬もこちらへ来て、にやりと笑いながらファイルで頭を叩いてきた。


「たまには役に立つじゃねえか」

「……瞬のプリントだけ紙飛行機にして飛ばしたい」

「ほめてやってんだろうーがっ! 喜べ。今後もほめて遣わす」


瞬ってひと言余計だよね。


冷ややかな想いが顔に出る前に予鈴が鳴り響く。


「じゃあわたし戻るね」

「このお礼は必ず!」

「え!? いらないよっ。気にしないで」

「みくるの礼なんかいらねえとよ」


そういう意味じゃない! ファイルで瞬の腕を叩けば、水島くんがくつくつとおかしそうに笑う。


「むしろ真っ先に写し始めた瞬が礼をすべきじゃなか?」

「僕的にはミカン以外でお願いしたいところかな」

「なんでハカセが礼をもらおうとしてんのよ。まあ確かに最近ミカンばっか渡してくる人がいるけど」

「うるっせえなお前ら! わかったよ礼すりゃあいいんだろ!? 万代てめえちゃんと考えとけよっ!」


みんなにからかわれたらしい瞬が怒った顔で、びしっとわたしを指差してくる。


「あははっ。うん、わかった」


やっぱりみんなが集まると賑やかで楽しいな。輪の中にいるだけで口元がほころんでしまう。


「じゃあ、またね」

「またね! 放課にメールするっ!」


みくるちゃんを筆頭に、みんなが見送ってくれる。
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